小線源治療
小線源治療とはどのような治療法ですか
小線源治療とは放射線を発生する物質(=放射性同位元素)でできた小線源を用いた治療法です。 現在我が国で放射線治療用の小線源として用いられている放射性同位元素にはコバルト 60、ラジウム226、セシウム137、金198、イリジウム192などがあります。形状はその用途によって粒状のものや針状のものなどさまざまです。
小線源治療とはこのような小線源を
- 病変の表面に密着させる→歯肉がんや頬粘膜がんの場合
- 臓器の内腔を通す→食道がんや子宮がんの場合
- 病変に直接刺し 入れる→舌がんや脳腫瘍の場合
ことによって 病変に極めて近い位置から放射線治療を行うものです。
小縁源治療の歴史は古く1898年のキュリ一夫妻によるラジウムの発見後、1901年にはこのラジウムを用いた最初の小線源治療が行われたという記録があります。初期の小線源治療には小線源を手で持って直接病変にあてがうといった原始的なものもありました。
その後小線源治療は技術的に洗練され、現在ではコンピュータ 一による3次元的な線量計算と小線源の位置制御によって精密な治療を行えるようになっています。
小線源治療の利点と欠点を教えて下さい
利点 |
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欠点 |
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高線量率と低線量率があると聞きましたが
同じ量の放射線を照射する場合、一定時間に照射される量(線量率)はそれぞれの小線源によって決まっています。時間あたりに照射する量が多い(=高線量率)と治療は短時間ですみますし、逆に時間あたりに照射する量が少ない(=伝線量率)と治療に長い時間かかります。
理論的には伝線量率照射の方が効率的にがん細胞を死滅させるとされていますが、臨床的にはほとんど差はありません。
また、低線量率照射では医療従事者の被ばくや患者さんの隔離といった問題を避けることが出来ませんが、高線量率アフターローディング法ではいずれも問題になりません。
どのような疾患が対象になりますか
線源をより小さく、細くすることが可能になって、対象疾患は増えつつあります。京都大学医学部附属病院 放射線治療科では現在以下のような疾患に小線源治療を行っています。
舌がん 口腔底がん 頬粘膜がん |
小線源単独で治療することが多い。外照射後の追加照射として行うこともある。 対象は最大経4cm以下のもの |
肺がん 気管支がん |
外照射後の追加照射として行う。 喀血・呼吸困難に対して小線源治療のみで 姑息的に治療する場合もある。 |
食道がん | 外照射後の追加照射として行う。 対象は深達度smまでのもの。それ以上では 腔内加湿装置を用いた同時加温を考慮。 |
胆管がん | 外照射後の追加照射としてPTCDチューブ内から照射する。 |
子宮頸がん 子宮体がん 腟がん |
外照射後の追加照射として行う。再発症例では小線源単独で治療することもある。 |
閉塞性動脈硬化症 | 血管形成術(風船を使って内腔から血管を 広げる)後の再狭窄予防に、小線源治療が有効と言われています。 |
具体的な治療法を教えて下さい
それぞれの部位で小線源の入れ方や治療スケジュールが異なります。
また、1 回の治療に要する時間も、線源の配置の複雑さなどによって大幅に異なります。
舌がん 口腔底がん 頬粘膜がん |
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低線量率 局所麻酔で病変部に直接針状の小線源を数本刺入します。そのまま約1週間留置します。患者さんはRI隔離病棟に入院していただきます。 高線量率after loading法 全身あるいは局所麻酔で病変部に直接、あるいは顎の下から舌の表面に向けてチューブに小線源を通して治療します。1回治療時間は10分前後です。 |
気管支がん | ![]() |
局所麻酔で、気管支ファイバースコープを使って病変部位にチューブを入れます。1 回の治療時間は1時間前後、 回数は週1回で3回治療が目安です。 |
食道がん | ![]() |
喉の麻酔をした後胃カメラと同じ要領で風船状のチューブを呑み込んでいただきます。病変の部位で風船をふくらませ、チューブの中に小線源を通して治療します。1回の治療時間は10分前後、回数は週1回で2-3回です。 |
胆管がん | ![]() |
肝臓から体外に胆汁を排出しているチューブ(PTCDチューブ)を少し径の太いものに変換し、そのなかにもう一つ細いチューブを入れて小線源を通します。1回の治療時間は1時間前後、回数は週1回で2-3回です。 |
子宮頸がん 子宮体がん 膣がん |
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外照射の後半に週1回、計 3-5回行います。子宮頸部専用の治療用具を挿入しそこに小線源を通します。1回の治療時間は1時間前後です。 |