京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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脳腫瘍

脳腫瘍

脳腫瘍は頭蓋内の組織から発生する原発性脳腫瘍と、肺癌・乳癌などの他の部位のがんが頭蓋内に転移して生じる転移性脳腫瘍の2種類に大きく分けられます。 原発性脳腫瘍は、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、神経鞘腫(聴神経鞘腫、顔面神経鞘腫、三叉神経鞘腫など)、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、悪性リンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、血管芽腫など様々な種類の腫瘍を含みます。 転移性脳腫瘍は肺癌、乳癌、腎細胞癌、消化管癌などからの転移が多いといわれています。 脳は生命維持や運動・感覚などの機能に重要な役割を果たしており、脳腫瘍の治療についてはその必要性や手段について慎重に検討を行う必要があります。それぞれの脳腫瘍の特性、発生部位、大きさ、経過、患者様の年齢や症状などを踏まえたうえで、一般的には手術、放射線治療、化学療法などが用いられることが多いですが、治療を行わず慎重に経過観察を行う選択もとられることもあります。

脳腫瘍に対する放射線治療

京都大学医学部付属病院ではがん診療部・脳腫瘍ユニットとして脳神経外科医・放射線治療医・小児科医が合同で脳腫瘍に対する診療を行っており、患者様ごとにどの治療法が最適となりえるか詳細に検討を行っております。(がん診療部・脳腫瘍ユニット) 当科では脳腫瘍に対する放射線治療として、一般的な外部放射線照射(局所照射、全脳照射、全脳全脊髄照射など)のほか、定位放射線照射強度変調放射線治療を行っております。

髄膜腫に対する放射線治療の一例

左側の図で表示している紫色の領域は、放射線治療が必要と判断された病変です。紫色の内側に赤色の領域がありますが、さらなる腫瘍の制御をめざし、この赤色の領域により多くの放射線を投与することとなります。 右側の図は放射線がどこにどの程度照射されているかを示す線量分布図です。処方線量以上が照射されている領域をカラーで表示しております。VMATを用いることにより、このような複雑な形の病変に対しても、病変の形にあった線量分布を得られることが可能となり、正常脳組織や重要な臓器にはなるべく放射線があたらないようにすることができます。

当院の治療成績

転移性脳腫瘍
35Gy(5回)の線量で定位照射を行った症例の局所制御率は、半年で92.1%、1年で86.7%でした。

聴神経鞘腫
20-24Gy(5-6回)の線量で定位照射を行った症例の局所制御率は、92%でした。 放射線治療後には一過性に腫瘍が増大することがしばしばみられますので、十分な経過観察が必要です。

髄膜腫
52.2Gy(29回)の線量で定位照射を行ったGrade Iの症例の5年局所制御率は96.8%でした。