京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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治療設備紹介

治療に用いる放射線を発生させる装置をリニアック(医療用直線加速装置 Linear accelerator)といいます。当院はOXRAY、Halcyon、TrueBeam STx、および2台のTrueBeam、合計5台のリニアックを有しており、全て高精度放射線治療が実施可能です。

放射線治療装置 OXRAY(日立製作所)[第1治療室]

OXRAYは日立製作所と京都大学との共同で開発された新型国産放射線治療装置です。当院では2024年より臨床使用を開始しています。

2010年より臨床使用されていたVero4DRTの優れた特徴を継承しつつ、多種多様な疾患へ使用可能となる機械的特性が新たに追加されています。

以下の優れた特長を有します。

1. 高精度ピンポイント照射
頑丈なOリング構造の内部に搭載された超小型Cバンド直線加速器とジンバル駆動式照射ヘッドにより、病変に対し高い精度で治療X線ビームを集中させることができます。また、これを患者さんの呼吸に合わせて行うことで、動体追尾照射を実現可能です。

2. 高度な画像誘導機構
2組の診断X線イメージャーにより骨格に基づいた位置照合を短時間かつ高精度に行います。また、コーンビームCT機能を用いることにより骨格だけでなく臓器構造に基づいた位置照合をすることも可能です。

3. 患者さんに優しいセットアップ
治療ベッドは平行移動だけでなく回転誤差の補正も可能であり、体位のズレをより正確に補正することが可能です。また、Oリング型構造のガントリーは、治療ベッドを回転させることなく定位照射を可能としています。これらの機構により、患者さんは一度治療ベッドに寝ていただくだけで、治療を終えることができます。

4. 動体追尾照射
呼吸性移動の大きい腹部や胸部のがん病変に対しては、ジンバル駆動式照射ヘッドを使用した動体追尾照射を用いることが可能です。2025年1月6日より、国産の放射線治療装置「OXRAY」を用いた、「原発性または転移性肺癌、肝癌および原発性膵癌に対する動体追尾強度変調回転放射線治療/動体追尾Dynamic Swing Arc強度変調回転放射線治療技術の実行可能性臨床試験」を開始予定です。

 

放射線治療装置 TrueBeam STx(バリアンメディカルシステムズ)[第3治療室]

TrueBeam STxは定位放射線治療や強度変調放射線治療などの高精度治療を極めて短時間に、かつ高精度で行うことが可能な次世代放射線治療システムです。以下の優れた特長を有します。

1. 6種類のエネルギーが選択可能なマルチエネルギー装置を搭載
通常の放射線治療機器は2-3種類程度のエネルギーしか選択できませんが、当院のTrueBeam STxは6種類のエネルギーが選択可能です。エネルギーを使い分けることにより、照射したい部位の体表面からの深さに応じて、最適な線量分布を可能にし、より精度の高い治療が可能になります。また6種類のうち2種類はフラットニング フィルタ フリー (flattering filter free:FFF) での高線量率X線エネルギーの出力が選択可能であり、極めて短時間に高精度治療を行うことが可能となっています。

2. 高度な画像誘導機構によりスピーディーなセットアップが可能
X,Y,Z方向及びアイソセンタ回転の標準4軸駆動に加え、Roll,Pitch駆動を追加した6軸治療台を有しており、X線透視画像によりリアルタイムに患者セットアップ位置のズレを検出し、自動的にベッドを動かして補正するシステムを有しています。

3. 2.5mmMLCにより高度に腫瘍にフィットさせた照射野が実現可能
TrueBeamは中央部には32対の2.5mmマルチリーフコリメーター、辺縁部には28対の5mmマルチリーフコリメーターを備えており、小さな腫瘍に対しても、凹形状の腫瘍に対しても、高度にフィットさせた照射野を作ることが可能です。

2015年8月より前立腺癌、頭頚部癌、婦人科癌、食道癌、膵臓癌等のように腫瘍と正常臓器が近く、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導を用いたより精度の高い放射線治療技術が必要な症例の治療に使用しています。

放射線治療装置 TrueBeam(バリアンメディカルシステムズ)[第4治療室]

TrueBeamは強度変調放射線治療などの高精度治療を短時間に、かつ高精度で行うことが可能な次世代放射線治療システムです。5-10mm幅のマルチリーフコリメータが装備されており、広い範囲の病変でも、形状にあった照射野の設定が可能です。

2017年7月より乳癌、食道癌等、広い範囲で腫瘍と正常臓器が近く、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導を用いたより精度の高い放射線治療技術が必要な症例に対する治療に使用しています。

放射線治療装置 TrueBeam(バリアンメディカルシステムズ)[第6治療室]

TrueBeamは強度変調放射線治療などの高精度治療を極めて短時間に、かつ高精度で行うことが可能な次世代放射線治療システムです。5-10mm幅のマルチリーフコリメータが装備されており、広い範囲の病変でも、形状にあった照射野の設定が可能です。以下の優れた特長を有します。

1. 7種類のエネルギーが選択可能なマルチエネルギー装置を搭載
通常の放射線治療機器は2-3種類程度のエネルギーしか選択できませんが、当院のTrueBeamは7種類のエネルギーが選択可能です。エネルギーを使い分けることにより、照射したい部位の体表面からの深さに応じて、最適な線量分布を可能にし、より精度の高い治療が可能になります。また7種類のうち2種類はフラットニング フィルタ フリー (flattering filter free:FFF) での高線量率X線エネルギーの出力が選択可能であり、極めて短時間に高精度治療を行うことが可能となっています。

2. 高度な画像誘導機構によりスピーディーなセットアップが可能
X,Y,Z方向及びアイソセンタ回転の標準4軸駆動に加え,Roll,Pitch駆動を追加した6軸治療台を有しており、X線透視画像によりリアルタイムに患者セットアップ位置のズレを検出し、自動的にベッドを動かして補正するシステムを有しています。

3. 体表面監視装置により放射線を使わずに高精度なセットアップ、および照射中のモニタリングが可能
放射線を使わずに高精度なセットアップ、および照射中のモニタリングが可能な光学体表面監視システムを有しており、体表面照合による放射線治療(Surface-Guided Radiation Therapy)が可能です。体表面に近い乳房照射などで精度の高い治療を提供することができ、特に左乳癌に対する深吸気息止め照射にて心臓線量の低減に有用です。

4. 頭蓋内腫瘍の定位放射線治療(SRS/SRT)をリニアックでより簡便に、短時間で照射可能
頭蓋内腫瘍、特に転移性脳腫瘍や一部の原発性脳腫瘍に対する定位放射線治療に対して、高い照射精度を維持したまま自動で寝台を移動させることが可能です。短時間で高精度な定位放射線治療が実現可能となりました。

2020年7月より乳癌、婦人科癌、胸腹部腫瘍、骨盤部腫瘍等、広い範囲で腫瘍と正常臓器が近く、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導を用いたより精度の高い放射線治療技術が必要な症例に対する治療に使用しています。

放射線治療装置 Ethos(バリアンメディカルシステムズ)[第7治療室]

Ethos(旧:Halcyon)は強度変調放射線治療などの高精度治療を極めて短時間に、かつ高精度で行うことが可能な次世代放射線治療システムです。表面に照射口部がなく治療装置と身体が衝突する危険性が低いため、治療装置が内部を高速回転することが可能です。一般的なリニアックに比べ、位置照合のためのCT画像はおそよ1/4の時間で鮮明なCT画像を撮像でき、およそ半分の時間で病巣へ正確な照射が可能となりました。2段式マルチリーフコリメーターを搭載していることから、コリメータ間から漏れるX線を高度に低減できるため、病巣へ集中した治療が可能です。

2020年4月よりHalcyonを実臨床稼働、2022年4月にEthosにバージョンアップとなりました。頭頚部癌、乳癌等、広い範囲で腫瘍と正常臓器が近く、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導を用いたより精度の高い放射線治療技術が必要な症例に対する治療に使用しています。また、患者さんの日々の腫瘍の位置や形状変化に合わせて最適化を行う即時適応放射線治療を可能とする装置であり、実臨床展開に向けて準備しています。

高線量率小線源治療装置 BRAVOS (バリアンメディカルシステムズ)[第2治療室]

2022年4月にバリアンメディカルシステムズの新規装置BRAVOSを導入しました。この装置はあらかじめ患者さんの病巣に留置したガイドチューブの中に、遠隔操作でイリジウム192という放射性同位元素を通すことによって病変を治療します。線源の位置はコンピュータで精密にコントロールされ、病変部に放射線を集中することができます。 患者さんの病変部以外の被曝を大幅に軽減することが可能です。

CTシミュレータ SOMATOM Definition AS(シーメンス), Aquilion ONE(CANON)

第1CT室 SOMATOM Definition AS (SIEMENS)


第3CT室 Aquilion ONE (CANON)

CTシミュレータは、放射線治療の開始前に、治療計画(どのように放射線を照射するかの計画)を実施するためのシステムです。CT画像上で病変部位と正常組織を確認しながら計画を行うことで、患者さん一人一人に合わせて、正常組織を避けつつ腫瘍に集中して放射線を照射できるような計画を立てることができます。また、腫瘍の動きを加味した「4次元 CT」の撮影が可能となっており、特に肺の底部や上腹部のように呼吸により大きく動く部位の腫瘍において、腫瘍の動きを把握し治療計画に盛り込むことができます。2022年4月に第三CT室にAquilion ONEを導入しました。

X線シミュレータ Acuity (バリアンメディカルシステムズ)

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X線透視画像を用いて放射線を照射する方向・範囲を決定する位置決め装置です。現在ではほとんどの患者さんでCTシミュレータを用いた治療計画が行われますので、X線シミュレータは肺がんに対するピンポイント照射の治療計画において、腫瘍の呼吸性移動を確認するような場合に限って使用されています。

放射線治療ネットワークシステム

各種の放射線治療装置、治療計画装置は、コンピュータ上でネットワーク化されており、全体が統合されたシステムとして稼働しています。そのため、患者さんの文字情報や画像情報を正確、迅速かつ適切に利用することが可能になっています。

高度な放射線治療計画装置、治療装置を備えるとともに、それらをネットワークで結び、最先端の放射線治療に取り組んでいます。