京都大学医学部附属病院 放射線治療科

menu

当科医局員 諏訪の論文が採択されました

当科医局 (現:京都大学生命科学研究科附属放射線生物研究センターのがん細胞生物学分野 研究員)の諏訪の論文がJCI insight誌に採択されました。

 

https://insight.jci.org/6/18

 

以下、論文の内容です。


個別化医療の実現には、治療効果や予後の予測による適切な治療法選択が重要です。腫瘍内低酸素領域は放射線抵抗性の要因で予後不良と相関しますが、腫瘍内低酸素量の測定法や腫瘍内低酸素に対する治療法は確立されていません。

本研究では、DNAマイクロアレイ実験により低酸素応答性に発現する分泌蛋白質のスクリーニングを行い、①腫瘍内低酸素量を簡便に予測する血液マーカー、②低酸素がん細胞の放射線増感に繋がる治療標的として、serine protease inhibitor Kazal-type I (SPINK1)を同定しました。まず、SPINK1が低酸素がん細胞からHIFs依存的に発現し、血漿中SPINK1量により腫瘍内低酸素量をモニターできることを明らかにしました。さらに、分泌されたSPINK1が隣接細胞にパラクリン的に作用し、EGFR-Nrf2依存的な抗酸化経路を活性化することで照射後のDNA損傷を軽減して放射線抵抗性を誘導することも明らかにしました。

なお、本研究は、京都大学生命科学研究科附属放射線生物研究センターのがん細胞生物学分野の原田 浩教授のご指導・ご協力により遂行することができました。今後は、これまでと同様に共同研究として、①血漿中SPINK1を用いた腫瘍内低酸素量を予測する新規血液マーカー、及び、②SPINK1を標的とした放射線増感剤開発、に向けてさらに研究を進めて参りたいと考えております。


※当科業績はこちらよりご確認ください。