京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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研修目標

京都大学医学部附属病院における卒後研修

はじめに

放射線科のサブスペシャリティには、大きく分けて画像診断と放射線治療があります。これらの専門家の養成を念頭に置き、京都大学医学部附属病院(放射線科・核医学科)では、大きく分けて3つのコースを用意しています。いずれのコースも原則4年間とし、専門研修終了後には放射線科専門医の資格(注1)を得るに足るトレーニングを提供できるものと自負しています。ここでは放射線腫瘍の専門医になるコースにつき説明いたします。(画像診断の専門医になるコースの概要はこちら

(注1): 放射線科専門医は一次・二次の2回の試験からなり、一次試験は卒後5年目(専門研修2年終了後)から、二次試験は卒後7年目(専門研修4年終了後)から受 験できます。放射線科専門医試験の一次試験では、画像診断・核医学・放射線治療の他に基礎(物理・生物・法令等)も含めて放射線医学全般についての広い知 識が問われます。二次試験ではさらに高度な専門性が要求されるため、サブスペシャリティの専門性に応じて、1.画像診断・核医学、2.放射線治療のいずれ かを選択することとなります

放射線腫瘍医コースの概要

大学病院もしくは研修に協力いただく事になっている第一線の病院の放射線科をローテートします。内容は放射線治療を十分に含めますが、画像診断の研修も4年のうち2年以上行えるようにします。これは、放射線治療がImage-guided Radiotherapy (IGRT) という言葉が示すように画像と融合した方向に発展しつつあることに対応するものです。また、市中病院でシニアレジデントを2-3年間経験した医師も受け入れます。

本研修プログラムは、スーパーローテーションを修了した卒後2年以上の医師を対象とし、主として京大病院放射線科における2年間の研修を通して、放射線治療の基礎的技能を修得するためのプログラムです。

なお、2年間中最低3ヶ月は画像診断学の研修を行います。 また、希望者はこの2年間に6ヶ月間のIVR 専任コースを選択することができます。
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放射線腫瘍医コースを終了した時点での到達目標

  • 主要な臓器のがんについて、「標準治療」の概要が理解・把握できている。
  • 放射線治療、化学療法、化学放射線療法中の患者に対して、適切な診療ができる。
  • 適切な放射線治療計画(シミュレーション)を独力で施行することができる。
  • 放射線治療の物理学的・生物学的基礎に精通し、実際の治療計画に応用できる。
  • 新患の診察を行い、放射線治療の適応や方法について自主的に判断し、その患者の治療計画を立案することができる。
  • ラジオサージェリー、IMRT、小線源治療、術中照射などの、高度な技術が必要な放射線治療に参加し、指導医の補助をすることができる。
  • 科内および診療科間のカンファレンスに参加し、治療方針について検討することができる。
  • 経験した貴重な症例について、指導医のもとで学会や専門誌などにおいてケースレポートを発表することができる。

研修システム基本骨子

当科では以下の基本的姿勢をもって若手医師の育成を行います。
(1)研修者と指導医のマンツーマン体制。
(2)研修達成目標リストに基づいた研修体制。
(3)ケースレポートファイルの作成。

マンツーマン体制

  • 指導医は研修者の研修をマンツーマンで指導する。
  • 研修者が幅広く経験する機会を得られるように、指導医以外の教官や医員の診療についての研修をスケジュールする。
  • 週1回のミーティングを行い、研修者の研修目標達成度や研修内容についての希望をフィードバックして研修をスケジュールする。
  • 勉強会、他科カンファレンス、学会・研究会、などへの参加をアレンジし、指導医からアドバイスを受ける。

研修達成目標リスト

放射線治療に関する各治療技術を修得するために、各項目ごとに目標症例数を決めて、到達度をチェックする目安とする。括弧内は年間目標症例数。

  • 放射線治療新患患者の診療計画(50例)
  • CTシミュレーション(50例)
  • X線シミュレーション(20例)
  • IMRT 治療計画(5例)
  • 体幹部定位照射治療計画・照射(5例)
  • 脳定位照射治療計画・照射(5例)
  • TBI(5例)
  • IORT(5例)
  • 小線源治療(5例)
  • 温熱療法(2例)
  • 入院患者管理
  • 治療中・治療後フォローの患者診察(子宮内診・喉頭ファイバー診の手技を含む)

主要な疾患については、疾患ごとに目標経験症例数を設定する。括弧内は年間目標症例数。

  • 転移性脳腫瘍(3例)
  • 原発性脳腫瘍(3例)
  • 眼窩腫瘍(2例)
  • 良性眼疾患(2例)
  • 上咽頭がん(2例)
  • 中咽頭がん(2例)
  • 下咽頭がん(2例)
  • 口腔がん(2例)
  • 副鼻腔がん(2例)
  • 喉頭がん(2例)
  • 肺がん(5例)
  • 食道がん(5例)
  • 悪性リンパ腫(5例)
  • 早期乳がん(5例)
  • 局所進行乳がん(2例)
  • 膵がん(3例)
  • 直腸がん(2例)
  • 子宮がん(3例)
  • 前立腺がん(5例)
  • ケロイドなど良性疾患(2例)

ケースレポートファイル

新患診察→治療スケジューリング→シミュレーション→治療中診察→入院(外来)での患者管理→フォローアップ、の全プロセスに関与する症例を月に数症例割り 当て、その症例をケースレポートファイルにして考察することで、放射線治療の過程を理解し、研修者の将来に渡る財産になりうるものとする。

(参考1)科内カンファレンス
  1. 新患症例検討会 毎週月曜日 午後4時半
  2. 放射線治療抄読会 毎週火曜日 午前8時
  3. 放射線科核医学科合同カンファレンス 毎週火曜日 午後5時15分
  4. 放射線物理・技術カンファレンス   毎週水曜日 午後5時
(参考2)診療科間カンファレンス

呼吸器外科、脳外科、小児科、耳鼻科、口腔外科、泌尿器科、乳腺外科、呼吸器内科、血液腫瘍内科、婦人科など

(参考3)IVR 研修における習得すべきあるいは目標とすべき事項
  1. Vascular IVR
    1. 習得すべき事項
      1. 血管造影の基本的な手技(穿刺、止血など)の習得
      2. 殆どの動脈にカテーテル挿入できる
      3. マイクロカテーテル、マイクロガイドワイヤーの操作習得
      4. 肝腫瘍に対する TAE 施行
    2. 目標とすべき事項
      1. A-port 留置術
      2. PTA, Venoplasty, Vascular stent留置
      3. PTPE
      4. BRTO
  2. Non-vascular IVR
    1. 習得すべき事項
      1. 超音波 (US) ガイド下穿刺術の基本的手技の習得
      2. 膿瘍ドレナージ、腫瘍生検
    2. 目標とすべき事項
      1. PTCD, biliary stent 留置
      2. 肝腫瘍に対する Tumor Ablation
      3. CT ガイド下肺生検
      4. CT ガイド下 PEIT, RFA

専門研修後の進路

4年間の専門研修終了後は、

  1. 4年間の大学院に入学して研究に専念し学位を修得する
  2. 大学病院に医員として勤務し、臨床経験を深めて専門性を高めるとともに研究にも携わり学位を修得する
  3. 関連病院において更なる臨床経験を重ねて一流の臨床放射線科医への道を進む

以上の進路を選択することが可能です。学位修得後は、海外の研究機関に留学することも容易です。NIH、ハーバード大学、UCLA、スタンフォード大学、 MDアンダーソンがんセンター、スローンケタリング記念がんセンター(米国)、エッセン大学(ドイツ)、ケンブリッジ大学(英国)などが今まで留学した施 設です。また、数多くの中核病院を関連病院として有しており、臨床医として大成する上で有利な状況にあると言えます。