入局者の声
柏木 健志:令和2年卒、令和4年入局 |
学生の頃に参加した講演会で、放射線治療によって子宮頸癌の腫瘍がみるみる小さくなる根治症例の発表を聴きました。外科でも内科でもなく、がん治療の三本柱として臓器の機能を保護しながら「切らずに治す」ことができる放射線治療に興味を持ちました。また、放射線治療は現在のがん治療において非常に重要な役割を占めており、対象患者が多いにも関わらず、人手不足である現状を知りました。逆に言えば、それだけ将来性のある分野であり、全国でも有数の規模を誇る京都大学医局で働きたいと思いました。
私は修練医として大学病院の放射線治療科で2年間働きました。私が思うその魅力についてご紹介します。
まず、京大放射線治療科の特徴として、「がんユニット」があります。各臓器のがん疾患単位で、内科・外科・放射線科を含む各科が合同で診察する「がんユニット」が存在し、他科の先生と積極的にコミュニケーションを取りながら、治療方針を決定します。そのため、臓器ごとの専門的な知識が得やすい環境であり、多面的な視点から、患者さんに最良の医療を提供できると思います。
さらに、最新の治療方法や放射線治療の守備範囲の広さに日々驚かされました。例えば、胃癌や膵臓癌の即時適合型放射線治療(ART)では、その日の腸管の位置移動や変形に合わせて最適化・再計画し、副作用を最小限に抑える試みを行っています。ほかにも、子宮頸癌の小線源治療や神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)、甲状腺癌術後に行う放射性ヨウ素(RAI)治療など外照射だけでなく様々な治療方法を行っており、常に最新の技術や知識を取り入れることの重要性を実感しました。
それ以外にも、病棟で日常のケアや化学療法を行えること、同期や近い年代の先生の人数が多いこと、指導医の層の厚さや症例数が国内トップクラスであり様々な学会に参加できる機会があることなどその魅力は文章では語りつくせません。
私は、この2年間の放射線治療科での経験で、単なる「放射線当て屋さん」ではなく、「放射線腫瘍医」として自信をもってキャリアの第一歩を踏み出せたと思います。ぜひ、京大病院に見学に来てください。多くの先生方が放射線治療科をこころざし、共に働けることを願っております。
立石 雄大:平成30年卒、令和3年入局 |
このページを見てくださっている先生方は、放射線治療に少なからず興味を持っているかと思われます。放射線治療科に入局した一例として、私が入局するに至った経緯をご紹介します。
私は初期研修2年までは、漠然と内科系のがん治療医になるかと考えていました。放射線治療科を進路に定めたのは、初期研修でのローテートがきっかけでした。小さな市中病院ではありましたが、体幹部定位放射線治療に精力的に取り組んでおり、早期肺癌の局所制御率が98%という事に衝撃を受けました。切らずに根治ができる放射線治療に魅力を感じ放射線治療医となることを決め、その時の恩師にも勧められ京大放射線治療科に入局しました。
放射線治療科の修練医となり2年となりますが、放射線治療医として働いて感じたことをいくつかお話します。一つは患者さんと顔を合わせて話をする機会がとても多いことです。放射線科というと黙々と作業しているイメージもありますが、我々の仕事のほとんどは患者さん・他科の先生との話し合いで、それにより最前の治療を組み立てていくことになります。そういった臨床的な事が好きな人こそ放射線治療科があっていると思います。また、たった2年の経験ですが、照射技術の向上による治療の進化のスピードに驚かされます。入局した頃と現在とで、たとえば骨転移の治療については緩和から局所制御を目指す方針となる患者が非常に多くなり、複雑となる治療方針の楽しさと難しさを日々実感しています。
次は京大特有の点についてお話します。数ある放射線治療科の中でも、京大には他にはない魅力がいくつもあります。指導医の層の厚さ、症例数は国内トップクラスであり、どこに行っても通用する力を身につけることができます。病棟もあり、化学放射線療法の患者の治療経過を間近で診療でき、放射線治療後の有害事象診療の経験を密に行えます。さらに特徴的であるのが、各臓器別の専門他科と並んで外来をし、合同カンファレンスで密な議論ができる点であり、放射線治療に限らない様々な治療方針を経験することができます。総合的なOncologistとしてのハイレベルな経験が積める環境であると感じています。
放射線治療は対象患者が多いにも関わらず、知名度が低く、人手不足で必要としている患者さんに提供しきれていないのが現状です。逆に言えば、それだけ将来性のある科であると思います。照射技術の向上に伴い、様々な場面で放射線治療が役立つ機会が増え、より照射の適応も拡大しています。ぜひ多くの先生方が放射線治療を志し、共に働けることを祈っております。
村上 高志:平成29年卒、令和2年入局 |
小学生の時分、近所の病院に日本初のサイバーナイフが導入され、主に脳腫瘍に対する放射線治療を開始するというニュースが地元メディアを賑わせました。その時の謳い文句が「切らずに治す」というもので、「手術以外にも腫瘍を治す方法がある」という程度で根治治療の認識を漠然と持っていましたが、自分の中のそのイメージは定位照射でした。
しかしながら学部講義でなかなか放射線治療の話題はなく、臓器別の教科書・参考書でも片隅にかかれる程度。臨床腫瘍学でようやく1週間程度のまとまった講義(それでも全国的には多い方だということを後に知りました)。ポリクリでも1週間程度しか回れないと知り、イレクティブで1か月回ることとしました。この1か月、また初期研修医になってからの2か月の間に、想像以上に多くの癌種で根治的照射が行われ、あるいは試みられていること、治療科の先生方がそれを限りなく追求されていることを知る機会を得ました。また緩和照射においては症状の程度、全身状態、予後等により線量・分割が治療医の診察・裁量で決まっていくことも魅力的でした。
ユニットによっては放射線治療科が主催しているものがあること、スタッフの先生方が複数臓器を専門にしておられることも当時の自分には新鮮に映りました。前立腺、食道、頭頸部のように、初診から治療方針決定に当科も関わっていくこと、症例によっては自科に入院の上担当医として経過を見ることができるのは京大放射線治療科の大きな特徴と考えます。
入局して大学で後期研修する中でも、依頼内容に沿いつつ「根治・準根治可能な症例をあきらめない」「限られた状況でも、安全性を意識しつつ最大限の治療効果を目指す」上級医の先生方の姿勢に多くのことを学んでおります。また得られた知見の発表、臨床試験の積極的な実施においても各臓器の専門家が居り、かつ全国でも有数のスタッフ数の当科は充実していると実感しております。
本邦の放射線治療はまだまだ積極的に行われているとはいえず、そもそも医療者であっても存在の認識に乏しいのが現実です。低侵襲であり、耐術困難・薬物療法抵抗性の症例においても病勢制御可能性のある放射線治療は想像以上に「自分の手で治す」感覚を味わえるものですがその魅力は筆舌に尽くしがたいものがあります。少しでも興味あればイレクティブ、初期研修に限らず一度当科を見ていただけたら実感いただけるかと思います。
小坂 拓也:平成29年卒、令和2年入局 |
あまり難しいことは言えませんので(苦笑)、京大出身という訳でも京大で初期研修をした訳でもない私が当科に入局を決めた経緯をご紹介出来たらと思います。
まず、私は自分の進路を以下の4点に注目して考えました。①診療科(分野)の魅力、②病院(大学)全体の魅力、③部署(医局)の魅力、④日常診療のシステム
このページを見ている皆さんはすでに放射線治療科に僅かでも興味をお持ちかと思いますし、放射線治療自体の魅力は他の先生方も熱く語って下さっていますので、この場で多くを語るのは控えておきます。あえて一文で言及してみるならば、「がんの三大治療の一つとして根治にも緩和にも携わることができ、特に緩和では局所制御のみならず疼痛改善や神経症状予防、止血などのQOL維持に直結する効果が比較的すぐに得られることなどが大きな長所」といったところでしょうか。もし良ければまたいつか、お酒でも飲みながら色々語りあってみたい部分だなぁとも思います。
病院全体の魅力でも、他の先生方が言及して下さっている「ユニット制の外来やカンファレンス」は京大らしさであり長所だと思います。“他科の准教授先生と当科の院生の先生が治療適応を忌憚なく議論する姿”などに京大の「科の垣根の低さ」や「本質を大切にする姿勢(正しい意見・知識には上下関係などない!)」を感じたり、日常診療に多施設・複数科合同の治験症例が当たり前に混ざっている様子に、「(私が初期研修を行ったような)普通の市中病院等では触れにくいアカデミズム」を感じたりもしました。
そして、私自身が一番に魅力を感じたのは、やはり京大放射線科自体の雰囲気です。私のような他大学出身者も変に区別されたりせず(実際ここ3年程度の入局者は国外も含めた他大学卒が7割)、女性も多い科ながら産休などのカバーも滞りなく、入局した後もとにかく懐が広い印象を受けています。それらが実現できているのは、上の先生方の人間性や気さくさ、またなにより医局自体のマンパワーなどによるものです。大学に人員(先輩ドクター)が多いことは「私達専攻医へのご指導・助言の視点の多さ」にも繋がっており、また“絶対的な正解”のない緩和照射のプランなどで先輩方の「様々なコンセプトやスタンスに触れられる良さ」もあるかと思います。若手のみならず(准教授を含めた)スタッフの先生方も当直業務を公平に分担くださる点や「曜日ごとに外来・病棟・治療計画など担当が分けられているシステム」によってもきちんとメリハリを持って日常診療に取り組めていますし、時間に追われ過ぎない生活は「誰よりも患者さんの病室で雑談をしている」という自負(苦笑)にも繋がっています。そんな雑談が、どこかで患者さんの心を救っていたり、ささいな症状を見つけるきっかけになったら良いなぁということを夢見ていたりもします。(本当はもっと勉強もしなくてはなりませんが)
伝えたい「良さ」の全てはとても語れませんでしたが、最後に付け加えるならば「初期研修後の3年間のうち、2年半ほどを“治療科専攻医”として過ごせる」ことも魅力だと思います。他の大学などではそもそも診断科と治療科が分かれていなかったり、後期研修の最初の3年(放射線科専門医取得までの1段階目)では大半を診断領域の勉強期間に当てたりしているプログラムがほとんどかと思いますので、早い段階で“自分は放射線治療医なのだ!”ということを強く意識出来る良い環境だと感じています。
米山 正洋:平成27年卒、29年入局 |
このページをご覧になっているということは、今後の進路に放射線治療、もしくは癌治療を志されている方なのではと推察します。しかし、放射線治療については学生の頃を含めてしっかりと触れる機会がなく、全景をイメージしにくいというのが実情ではないでしょうか。
放射線治療は手術、化学療法と並んだ癌の3大治療のひとつですが、馴染みが薄いことからまだまだ人々に知れ渡った治療とは言えず、医師及びコメディカルの人数も不足している状況です。本来は切除と同等の根治成績を持つ放射線治療が選択肢に挙がらなかったり、癌性疼痛のコントロールに薬物療法だけがなされているケースなども多々見受けられます。あらゆる治療/手段を組み合わせて行うのが癌治療ですが、欧米と比較しても日本の癌治療では放射線治療が活躍しきれていないのが現状です。
私は大学4回生ごろから、形態温存が可能で癌診療に横断的に関われるこの科を志していました。浮気することなく入局できたのも、学生の見学時から関わってくださった指導医の先生方に大きく影響されたからです。現在は放射線治療の実臨床について勉強する毎日ですが、その先には医学物理学、放射線生物学、臨床研究といった世界も広がり、放射線治療の世界の深さには入局してからも驚くばかりです。
京大の放射線治療科は日本でも屈指の規模とネットワーク、そして指導医の先生方の層の厚さを誇ります。私自身が将来どのような分野を専門にするかはまだ定かではありませんが、この京大放射線治療ネットワークの中で研修、指導を受けられたことはかけがえのない財産になると感じています。
私は現在天理よろづ相談所病院で修練医2年目として画像診断と放射線治療を平行して研修していますが、診断科の先生方とも非常に良好な関係を築けています。また、大学や他の病院に修練医として赴任している同期とも積極的にコンタクトをとれる環境です。初期研修医の時は1年目医師を始めて雇用し、しかも一人という中でしたので(それはそれで修行にはなったのですが))こうして同期や近い年代の先生がいる環境は大変ありがたく感じますし、刺激も受けます。
以上、京大放射線治療科の魅力について少しだけでもこれをご覧になっている先生方に伝われば幸いです。私自身のように、他大学からの入局者にも門は常に開かれています。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度見学にお越しください!
鳥塚 大地:平成26年卒、28年入局 |
私は大学5年の時点から漠然とがん治療に興味を持っていましたが、放射線治療医になる契機となったのは母校の臨床実習でした。臨床実習で初めて放射線治療医の日常業務・がん治療において果たす幅の広い役割を目の当たりにしました。
私の考える放射線治療医の最大の魅力は全身のあらゆる臓器に対し、根治・緩和治療に関われる点にあります。
当科は日本で有数の規模を誇る医局で、臨床・研究の両面においても非常に積極的に取り組んでいるのが特徴です。私自身は京都大学出身ではありませんが、他大学出身の先生も数多く在籍され分け隔てはありません。また京都大学医学部附属病院の大きな特徴としては、臓器別にユニットに分かれて治療方針を検討するカンファレンスが開かれる点にあります。例えば、肺癌であれば手術適応の有無、術前・術後の治療に関して外科・内科医・放射線治療医・放射線診断医が集まり協議することとなります。他科の先生の治療方針を決定する際の思考過程について学ぶことが出来大変勉強になります。日々、勉強する必要のあることは非常に多く大変ではありますが、興味が尽きることはありません。
学生時代の私がそうであったように放射線治療医の日常業務や魅力に関しては、外部からはなかなか理解しにくい部分がありますので、ご興味がある方は是非見学にお越しください。
武野 慧:平成24年卒、26年入局 |
放射線治療も徐々にがん治療の3本柱の一つとして認知されつつありますが、まだまだ外科・内科と比べると圧倒的に人数も少なく小所帯であるのが現実です。また、放射線科医と言ってまず一番に想像されるのは画像診断でしょう。残念ながら放射線科の中でも、放射線治療はマイナーな存在です。しかし、オンコロジーをやるうえで放射線治療はなくてはならない存在であり、その病院のがん治療の質を左右しうる存在であることは間違いありません。また、放射線科の中でも、最近では徐々に診断と治療の講座が分かれつつあり、存在感を増してきています。
そのような中において、京都大学の放射線治療科は日本で有数の規模を誇る医局で、臨床・研究の両面においても非常に積極的に取り組んでいるのが特徴です。私は学生時代からがん治療、とりわけ放射線治療に興味があり、研修先として放射線治療の分野で最も有名な京都大学を選ぶことには迷いはありませんでした。私自身は京都大学出身ではありませんでしたが、京都大学の学風として外部から来る先生に対してもオープンであることも大きな魅力でした。
先ほど申し上げた通り、がん診療は外科・内科・放射線治療科が協力して進めていくものであり、放射線治療の研修を受けるにあたっても、他科とのかかわりが非常に重要になってきます。その点も京都大学の放射線治療科なら、食道癌・膵癌・脳腫瘍・頭頸部癌などの疾患ごとに合同でカンファレンス・診療を行うユニット制を採用しており、がん診療全体の中での放射線治療の立場を踏まえた研修を受けることができることも大きな特徴です。 放射線治療科としての規模が小さいと、往々にして内科・外科のオーダー通りに放射線を当てるだけになってしまいがちですが、京都大学のように放射線治療科が積極的であれば、単に放射線を当てるだけでなく、オンコロジストとして外科・内科と対等にディスカッションして、放射線治療を含めた治療方針の中から最適なものを提案することができ、まさに放射線治療医の醍醐味もそこにあると思います。
そして、何よりも大切なのは仲間です。京都大学の放射線治療科は年代の近い同期や先輩がたくさんおり、気軽にいろいろ教えてもらったり、相談に乗ってもらったり、様々な刺激を受けられることが大きな魅力です。 放射線治療の魅力はなかなか言葉だけでは説明しがたいですが、もし少しでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひ一度見学に来ていただければいつでも大歓迎です。皆様と一緒に仕事をできることを楽しみにしています。
諏訪 達也:平成23年卒、25年入局 |
高齢化が進み、二人に一人が癌になるといわれる現在の日本において、放射線治療は、手術および化学療法と並んで、癌治療における三本柱の一つとして重要な役割を担っています。従来と比べ医療技術も発達し、既に放射線治療のみで根治出来るといわれる癌があり、同様に進歩する抗癌剤や分子標的薬と併用することで手術と同様に制御率の高い局所治療が可能です。また、今後は単に根治率を目指した拡大切除よりも、患者のQOLを考慮した治療法が重要視されるような時代となり、低侵襲・機能温存を実現する放射線治療は非常に効果的な治療法となることは間違いありません。例えるならば、従来の外科主導の治療から「科学のメスで癌を切る」治療へと変貌していくだろうと考えます。
京都大学の放射線治療科では、卒後3年目から放射線治療の研修が可能です。従来のように画像診断学と放射線治療学を並行して2年間学んでから放射線治療へ進むという流れも悪くないと思いますが、より早くから放射線治療業務を行うことは、化学療法や外科手術、画像診断学の知識も必要な分だけ付随して得ることができ、非常に効率よく研修できます。また、京大病院では既に各臓器の「がん」疾患単位で、内科・外科・放射線科を含む各科が合同で診察する「がんユニット」を設立し、他科の知識が得やすい環境もあります。
初期研修中、私自身は、実は始めは横断的な知識を有するジェネラリストに憧れていました。オンコロジストというのは腫瘍専門家であり、悪く言えば専門馬鹿的な面もあるかもしれませんが、全身の腫瘍を横断的に見ることのできる(通常の内科・外科は臓器別に専門分化しているのとは対照的)科であり、このユニークな面に興味を持ち放射線腫瘍科を志すことにしました。母校ということもありますが、今までに述べた理由もあり、京都大学放射線腫瘍科に入局することに迷いはありませんでした。
放射線腫瘍科は、馴染みが無いという理由で、初めはなかなか興味を持ちにくいかもしれませんが、やりがいのある仕事で、その魅力は文章では語りつくせません。もし少しでも興味ある方がいらっしゃれば、ぜひ一度、放射線治療の世界を垣間見て頂ければきっと御理解いただけると思います。心よりお待ちしています。
芦田 良:平成22年卒、24年入局 |
私が放射線治療を目指したきっかけとしては、他の方々のように「腫瘍学」としての側面もありますが、放射線物理や治療装置にかかわる機械・物理の側面もありました。 放射線治療科はリニアックなど放射線を照射するための装置や、治療計画装置と呼ばれるCT上で放射線の挙動をシミュレーションするソフトウェアを使用するなど、機械に触れることが多い科です。私はもともと物理学やソフトウェア開発などに興味もあったので、そういった点に興味を持ち始めたのがきっかけでした。私が初期研修医だった時、京大放射線治療科と三菱重工の共同開発放射線治療装置、Vero 4DRTの話を聞き、これが入局を考えるきっかけとなりました。機械・物理の研究は直接患者さんを治すものではないですが、技術・道具の進歩は医療水準の上昇にも繋がり、結果的に将来の患者さんの治療可能性を引き上げることができるものと考えています。京大放射線治療科では物理士の方も多く、こういった面でも力を入れています。
ただし、臨床において放射線治療を行う上では腫瘍の性質、患者さんの状態・予後などを考慮する上で腫瘍学的な知識は不可欠となってきますが、物理・機械的な知識は必ずしも必要と言うものではありません。近年はロボット手術など、他科でも機械に触れることはありますが、それらに機械工学の知識がほとんど不要なのと同様です。機械系が苦手な人でも実臨床で困ることはまずないと思いますのでご安心ください。 また、臨床面についても、私は後期研修医として最初の2年間を京大病院、3年目を倉敷中央病院で研修をしていますが、2年目以降は年間300件を超えるペースでの治療計画数を行っています。IMRTやSRTなどの高精度治療も症例数が多く、臓器領域も京大病院ではユニット制を組み他科の先生と共同の外来システムをとり、ほとんどの領域をカバーできています。また、関連病院の数も多く、各地に存在しているので症例の取り合いになるようなこともまずないと思います。多くの症例に触れることは技術を磨く上で大事ですので、技術向上にもいいでしょう。
ここまで書かせて頂きましたが、腫瘍学を学ぶ、臨床を頑張る、の他にも、物理や機械に興味がある、といった面からでも放射線治療は面白い科だと思っていますので、興味のある方は是非一度放射線治療を見に来て頂ければと思います。
平田 希美子:平成20年卒、22年入局 |
がん治療に関わる仕事がしたい、私は学生時代になんとなくそんな風に思いながら病院実習をしていました。放射線科の実習はたった1週間でしたが、放射線治療でがんを根治し得た症例を目の当たりにし、放射線治療に興味を持ちました。その後、初期研修中に放射線治療の根治的治療の役割だけでなく緩和治療としての側面も知る機会があり、ますます面白い分野だと感じ生涯の仕事に決めました。
京都大学放射線治療科はスタッフも関連施設も多く、後期研修医として充実した教育を受けることができます。大学病院では充実したスタッフの下、1例1例について深く勉強することで放射線腫瘍学の基礎や放射線治療医としての基本的な技術を学びます。大学病院での1年間の研修の後、私はがんセンターで研修する機会を得ました。そこでは数多くの症例を経験し臨床医としてのスキルを磨くことができました。現在は大学院生として再び大学病院で臨床に携わっていますが、同じように関連施設やがんセンターで研修した同世代の医師と活発に議論しながら、各施設での治療法や考え方の相違を聞き見識を深めています。 同世代の仲間との出会いは、私にとって大変有難いことでした。これほど入局者数の多い放射線治療科の医局は全国でも類をみないのではないでしょうか。医師の数が多いことで経験症例数が減るという懸念もありますが、その分関連施設も多いので症例数不足を感じたことはありません。逆に、同世代の仲間がそれぞれ研修してきたことを共有し、多くの知見を得られています。そして、日常の小さなことも相談できる仲間がいることはとても心強いことです。 放射線治療は少しマイナーな分野なので、足を踏み入れにくい領域かもしれません。けれど、がん治療において重要な役割を果たす分野です。
そして、京大放射線治療科では、一人前の放射線治療医になるための教育カリキュラムが整っていると同時に、志を同じにする同世代の仲間が大勢います。がん治療や放射線治療に興味をお持ちの方は、ぜひ京大放射線治療科へいらしてください。
(平成29年に大学院を卒業後、京都市立病院で勤務)
放射線治療~がん治療の重要な一翼です~
岸 高宏:平成19年卒、21年入局 |
現在の日本は、二人に一人が癌になり、三人に一人が癌で亡くなる時代です。放射線治療は、手術および化学療法とならんで癌治療における三本柱の一つとして数えられます。放射線治療のみでも根治出来る癌があり、手術と同様に制御率の高い局所治療が可能です。また、化学療法と併用することで、更に制御率が向上させることができます。このように放射線治療は、現在の癌治療において非常に重要な役割を占めています。 高齢化が急速に進む今日の日本では、癌治療においても低侵襲治療の必要性が高まっています。また、患者のQOLを大切にした治療の必要性も高まっており、機能を温存することが重要視されています。放射線治療は、この低侵襲、機能温存を実現する非常に効果的な治療法です。医療従事者はもちろんのこと、患者さんにもこのような放射線治療の長所が理解されつつあり、放射線治療件数は年々増加しています。
私が医学部に入学したころは放射線治療のことなど全く知りませんでしたが、講義で上記のような放射線治療の有効性、将来性を知り、放射線治療科を選択するに至りました。 放射線治療は通常数週間を要する治療である為、治療中に患者の症状が日に日に改善していく様子や腫瘍が縮小していく様子を観察することが出来る機会も多く、放射線治療の効果を改めて感じるとともに、非常にやりがいを感じます。私はまだ放射線治療の経験が浅く、高度な治療は未経験ですが、今後そのような治療にも携わるようになると、さらに効果の高い治療、負担の軽い治療が出来るようになるのだろうと今からとても楽しみにしています。
どのような分野かなじみも薄く、なかなか興味を持ちにくい面もあるかもしれませんが、非常に有意義でやりがいのある仕事です。一人でも多くの方に興味を持っていただいて放射線治療科の門を叩いて頂きたいと思います。