京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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定位放射線治療(肺)

頭部以外の病変に対する定位放射線治療のことを特に体幹部定位放射線治療(Stereotactic Body Radiation Therapy; SBRT)と呼びます。

下記の疾患を対象としています。

  1. 原発性肺癌(直径が 5 cm以内で,かつ転移のないもの)
  2. 転移性肺癌(直径が 5 cm以内で,かつ 3 個以内で,かつ他病巣のないもの)
  3. 原発性肝癌(直径が 5 cm以内で,かつ転移のないもの)
  4. 転移性肝癌(直径が 5 cm以内で,かつ 3 個以内で,かつ他病巣のないもの)

治療をうけられる条件として、病変部位が正常臓器に近接していないこと、活動性の間質性肺炎を有しないこと、腕を上げた状態で30分以上の安静保持が可能であることなどがあります。定位放射線治療が適しているかどうかは、診察した上で判断します。

治療準備

治療実施に先立ち下記のような準備を行います。

固定具作成

毎回の治療で病変位置を正確に再現するために各患者さん専用の固定具を作成します。固定具と言ってもピンやベルトで固定するわけではなく、体を広く包み込むようなクッションのような物です。固定具と体の位置関係を再現するために、皮膚面にはマーキングを行います。

呼吸性移動の評価

腫瘍は呼吸に伴って移動し、部位によっては30mm以上移動します。これをX線透視で観察し、その移動量・移動方向を評価します。移動量が大きい場合には、腹部を圧迫し呼吸性移動の低減を図ります。また、必要に応じて動体追尾放射線治療を考慮します。

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CT撮影

病変部位や周囲正常組織を三次元的に正確に同定するためにCTを撮影します。また、上述の呼吸性移動評価を補助する目的で四次元CTの撮影も行います。

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治療の実際

数日の検証を経て、実際の治療に移ります。

体位再現

固定具の上に寝ていただき体の位置を再現します。その後X線撮影を行い、病変部位を正確に捉えられていることを確認します。

放射線照射

1日1回12.5グレイの照射を4回行い、合計50グレイ(腫瘍中心70グレイ)の線量を病変に対し照射します。1回あたりの治療時間は約40分です。上述の治療準備と合わせて治療にかかる日数は約10日間となっています。

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治療成績

効果

当院では1998年より500症例以上の肺腫瘍に対して定位放射線治療を行ってきました。原発性肺がんI期(T1-2N0M0)症例に限ると、1998年~2007年までに101例の症例を定位放射線治療で治療し、3年の局所制御率が87%、全生存率が59%という成績でした(2011年松尾、Int J Radiat Oncol Biol Phys誌)。一般的な手術成績と比較しても、手術ができない高齢者(平均77才)を主な対象としたことを考えると、十分な治療効果と考えています。

また、2014年2月より諸外国の照射線量や治療成績と比較し、本邦での照射線量が小さく局所制御率もやや低いことから、従来手法よりも腫瘍により線量集中性を高めた放射線治療を行っております。照射線量は、48グレイ/4回から腫瘍全体に50グレイ/4回(腫瘍中心70グレイ)へ増加していますが、線量集中性を高めたことで、肺や食道などの正常臓器には従来手法と同程度以下の照射線量に抑えることができ、より安全で治療効果の高い治療となっています。2015年9月現在、50症例以上の患者さんをこの照射法で治療していますが、肺障害などの有害事象は従来照射法と比較し同程度以下、腫瘍の局所制御率はさらに向上しています。

早期肺癌に対する体幹部定位放射線治療は、ここ数年の患者さんの半数近くの年齢が80歳以上であることを考慮すると、高齢者にも行える患者さんに大変やさしい治療効果の高い治療法だと言えます。

副作用

副作用としてもっとも懸念されるのは放射線肺臓炎ですが、現在までのデータでは、治療を必要とする放射線性肺臓炎の発症は7%でした。致死的な肺臓炎となったのは1%未満です。肺以外の合併症として、皮膚炎、肋骨骨折、肋間神経痛などがありますが軽度にとどまっており、一般的な放射線治療における副作用と同じレベルとしてよいと考えます。なお、当院では経験がありませんが、致死的な肺出血や食道潰瘍の報告もなされており、病変が危険臓器(心臓・大血管、気管、食道など)に近い場合には定位放射線治療を実施できないことがあります。