京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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定位放射線治療(肺)

体幹部定位放射線治療(Stereotactic Body Radiation Therapy; SBRT)は、下記の疾患が保険適応となっています(2018年現在)。

  1. 直径が5 cm以内で,かつ転移のない原発性肺癌、原発性肝癌または原発性腎癌
  2. 3 個以内で,かつ他病巣のない転移性肺癌または転移性肝癌
  3. 転移病巣のない限局性の前立腺癌
  4. 脊髄動静脈奇形

本項目では、肺癌に対する定位放射線治療について説明しています。

治療をうけられる条件として、病変部位が正常臓器に近接していないこと、活動性の間質性肺炎を有しないこと、腕を上げた状態で30分以上の安静保持が可能であることなどがあります。定位放射線治療が適しているかどうかは、診察した上で判断します。

治療準備

治療実施に先立ち下記のような準備を行います。

固定具作成

毎回の治療で病変位置を正確に再現するために各患者さん専用の固定具を作成します。固定具と言ってもピンやベルトで固定するわけではなく、体を広く包み込むようなクッションのような物です。固定具と体の位置関係を再現するために、皮膚面にはマーキングを行います。

呼吸性移動の評価

腫瘍は呼吸に伴って移動し、部位によっては10mm以上移動します。これをX線透視で観察し、その移動量・移動方向を評価します。呼吸性移動が大きい場合には、呼吸性移動対策を行っており、当院では、腹部圧迫法(腹部を圧迫することで、呼吸の大きさを制限する方法)、呼吸同期照射(腫瘍が特定の範囲を動いている間だけ、照射を行う方法)や動体追尾放射線治療などがあり、各患者さんに最適な方法で治療を行っております。

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CT撮影

病変部位や周囲正常組織を三次元的に正確に同定するためにCTを撮影します。また、上述の呼吸性移動評価を補助する目的で四次元CTの撮影も行います。

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治療の実際

数日の検証を経て、実際の治療に移ります。

体位再現

固定具の上に寝ていただき体の位置を再現します。その後X線撮影を行い、病変部位を正確に捉えられていることを確認します。

放射線照射

病変と正常組織の位置関係により、治療回数は決定します。原則的に、末梢性の場合は4回、中枢性の場合は8回または16回で治療を行なっています。

1回あたりの治療時間は約1520分です。

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治療成績

効果

当院では1998年より700症例以上の肺腫瘍に対して定位放射線治療を行っており、1998年〜2014年に中心線量48グレイ/4回の定位放射線治療を行った末梢性原発性肺がん(3cm以下)216例、230病変の症例の検討では5年の局所制御率81%、全生存率51%という治療成績でした(2018年新谷、Int J Radiat Oncol Biol Phys誌)。また、20142月より諸外国の照射線量や治療成績と比較し、本邦での照射線量が小さく局所制御率もやや低いことから、従来手法よりも腫瘍により線量集中性を高めた放射線治療を行っています。照射線量は、48グレイ/4回から腫瘍全体に50グレイ/4回(腫瘍中心70グレイ)へ増加していますが、線量集中性を高めたことで、肺や食道などの正常臓器には従来手法と同程度以下の照射線量に抑えることができ、より安全で治療効果の高い治療となっています。20189月現在、100症例以上の患者さんをこの照射法で治療していますが、肺障害などの有害事象は従来照射法と比較し同程度以下、腫瘍の局所制御率はさらに向上しており、治療成績は2年局所制御率96%、全生存率は85%でした(2018年光吉、Clin Lung Cancer誌)。

本邦での一般的な手術成績は、臨床病期IA期、IB期で、それぞれ82%66%と非常に優れた成績ですが(2011年 Sawabataら、J Thorac Oncol誌)、定位放射線治療の対象は手術ができない高齢者を主な対象としたことを考えると、高齢者にも行える安全かつ治療効果の高い治療法だと言えます。

副作用

副作用としてもっとも懸念されるのは放射線肺臓炎ですが、現在までのデータでは、治療を必要とする放射線性肺臓炎の発症は7%でした。致死的な肺臓炎となったのは1%未満です。肺以外の合併症として、皮膚炎、肋骨骨折、肋間神経痛などがありますが軽度にとどまっており、一般的な放射線治療における副作用と同じレベルとしてよいと考えます。なお、当院では経験がありませんが、致死的な肺出血や食道潰瘍の報告もなされており、病変が危険臓器(心臓・大血管、気管、食道など)に近い場合には定位放射線治療を実施できないことがあります。