京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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食道がん

食道がんの放射線治療について

食道がんは肺がんや膵がんと並んで最も治りにくいがんの一つです。食道がんの治療にはその進行度に応じて手術、放射線治療、内視鏡切除が用いられています。京大病院では2007年4月より、消化器内科・消化管外科・放射線治療科の医師が合同で患者さんを診察し、治療するための外来「外来がん診療部 食道がんユニット」を開設し、一人一人の患者さんのデータを各科の専門医が詳細に検討した上で、科学的根拠に基づき、さらに患者さん自身のご希望も考慮した最適な治療方針を提案しています。

放射線治療は患者さんの病状や全身状態に応じて、化学放射線療法や腔内照射などを行っています。手術可能な病期(臨床病期II、III期)の患者さんでは外科的切除が標準治療(最も治る可能性が高い治療)であり、第一選択であるとされていますが、食道温存を希望される方には化学放射線療法を行います。表在がん(臨床病期I期)は内視鏡切除あるいはそれに放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療(化学放射線療法)で切らずに治せるのではないかということが期待され、臨床試験が行われています。また手術が不可能な進行がんの患者さんでも、化学放射線療法で完治する方がおられ、有効な治療法です。

食道癌のうち頸部にできる食道がんは病変の部位によっては手術の際に喉頭も同時に摘出され、声が出なくなる可能性があります。頸部の食道がんでは強度変調放射線治療(IMRT)を積極的に導入し、声を温存すると同時に治療成績の向上を目指しています。

201410月からは食道がんの中で発生頻度の高い胸部食道癌に対してもIMRTを臨床導入しました。従来の照射方法と比較してIMRTは心臓や脊髄といった食道周囲臓器の線量を低く抑えることができ、従来の方法では十分量の放射線を当てることが時に困難だった原発巣や転移リンパ節に対しても、十分に放射線量を投与できるようになりました。

胸部中部食道がん 化学放射線療法後の治療経過

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上部胸部進行食道がん T4N1M1 cStageIV 初診時

 

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化学放射線療法後 完全反応(CR)

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頚部進行食道がん T3N1M0 cStageIIIa 初診時

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化学放射線療法後 完全反応(CR)

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頚部進行食道がん T4bN2M1 cStage IV に対するIMRTの線量分布

頚部食道IMRTの図4

治療後56か月が経過し、発生・嚥下機能は温存され、無再発生存中

頚部食道IMRTの図3