動体追尾放射線治療
動体追尾放射線治療とは
肺や腹部のがん病変は呼吸にともなって移動し、部位によっては30mm以上移動することもあります。動く病変に対し放射線治療おこなう場合、移動範囲をすべて含めた広い範囲を照射する方法が一般的です。しかしながら、がんの移動範囲をすべて含めた広い範囲に照射を行うとがんの周りの正常な組織も広く照射され、肺・肝臓・腸管などの臓器が放射線によって障害される副作用の危険性が高くなります。そのため、呼吸性移動に対応しつつ照射範囲を小さくする技術の開発が求められていました。
動体追尾放射線治療では、がんの移動に合わせて照射範囲も移動させるため、がんへの放射線量を十分保ったまま、正常な臓器の放射線量を低くすることが可能です。この治療法により、高い治療効果と副作用の危険性の低減の両立が期待できます。
当院では2011年9月より肺がんに対して、2013年3月より肝臓がんに対して、2013年7月より膵臓がんに対しても、動体追尾放射線治療を開始しています。
動体追尾放射線治療の手順
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診察
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金マーカー挿入
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固定具作成
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CT撮影
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4Dモデリング
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治療計画
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治療
動体追尾放射線治療の適応であるか、または照射ができるかどうかを検討します。判断のために追加の検査を行うこともあります。
ご不明なことがあれば、診察時にご質問ください。
動体追尾照射に必要な金属のマーカー(純金製)をがんの近くに挿入します。
挿入の方法は各臓器によって異なりますので診察時に説明いたします。
毎回の治療で正確に病変の位置を再現するために固定具を作成します。体を包むクッションのようなもので、固定具と体の位置関係の再現のため皮膚にインクで印をつけます。
病変の場所、呼吸による移動を正確にみるために何度かCT撮影を行います。
病変の部位によっては造影検査を行うこともあります。
実際の治療機を用いて、お腹の動きと体内のがんの動きを評価して関連づける作業です。
患者さんごとに最適な治療計画を立案します。照射する線量は病変ごとに異なります。
治療用の放射線を照射する前に、病変が正しく追尾していることをX線透視によって確認します。治療中もX線透視で確認しますので、間違って追尾照射をすることはありません。
1回あたりの治療時間は20−40分くらいです。
よくある問い合わせと回答
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対象となる疾患は?
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健康保険の適応はありますか?
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治療の回数(期間)は?
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入院が必要ですか?
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どこに受診すればよいでしょうか?
対象となる疾患は肺がん、肝がん、膵がんです。
病変が限局している、呼吸で1cm以上動くなど臨床研究で定められた条件を満たすがんについて動体追尾放射線治療を行っています。条件を満たさない病変につきましては動体追尾ではないですが、個々の患者さんにとって最適な治療法を検討いたします。
呼吸性移動対策加算として健康保険で認められている治療です。
対象外の疾患に対しては、自費診療であっても受け付けておりません。
原則として、追尾照射を行う回数は肺がん4回(約2週間)、肝臓がん5回(約1週間)、膵臓がん15回(約3週間)です。ただし、治療を開始するまでにマーカー留置やCT撮像・治療計画など最低1-2週間の準備期間が必要です。
マーカー挿入のための入院が3日程度必要です。
治療期間中は原則として入院していただいておりますが、患者さんの状態や治療期間によっては外来で治療を行うこともあります。
当院での追尾治療を希望される方は、当院放射線治療科各曜日の総合外来を受診していただいきますようお願い致します。判断が難しい場合は別の曜日の専門外来に来ていただくこともあります。専門外来の曜日につきましてはお問い合わせください。
なお、現在かかっている病院の紹介状が必要です。資料をお持ちいただいても正確な検討のために追加で検査を行うことがありますのでご了承ください。