京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)

強度変調放射線治療とは?

ターゲット(腫瘍)の形状が不整形で複雑な場合、従来法の放射線照射法では腫瘍周囲の正常組織や臓器にも腫瘍と同じ線量が照射されてしまい、腫瘍制御率を高率に維持しながら合併症を低く抑えることが困難でした。強度変調放射線治療(IMRT)は、コンピュータの助けを借りて腫瘍のみに放射線を集中して照射できる革新的な照射技術です。これにより合併症を軽減しながら根治性を高めるといった従来では実現不可能であった放射線治療が展開できるようになりました。
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また現在ではIMRTの応用型で回転原体照射に強度変調機能を加えた強度変調回転照射法(VMAT)が主流となっています。周囲正常臓器への影響を抑え、治療時間の大幅な短縮が可能となりました。

         頭頚部VMAT照射の例

対象疾患

平成22年4月に健康保険の適応が「限局性固形悪性腫瘍」へ拡大され、大多数のがんに対する根治照射が保険診療で可能となりました。京都大学では、従来の照射方法と比較して医学的にIMRT/VMATの有用性が高いと判断される場合には積極的に適用しています。現在までに京都大学においてIMRT/VMATでの加療を行った疾患としては、前立腺がん、中枢神経腫瘍、頭頸部腫瘍、食道がん、悪性胸膜中皮腫、縦隔腫瘍、膵臓がん、子宮がん、後腹膜腫瘍、骨腫瘍、直腸癌・肛門管癌、肝臓癌などが挙げられます。尚、同じ疾患でも、病状によってもIMRT/VMATが適当な場合とそうでない場合があり、適応は個々に判断いたしております。

 

治療準備

治療実施に至るまでに以下の準備を行っていきます。

固定具作成

治療期間中、ターゲットへの放射線照射の集中性を計画通りに遂行するために患者さん毎に適切な固定具を作成いたします。固定具は体を広く包み込む特殊なプラスチック板またはメッシュ状板、バキュームクッション等を使用します。ただし、固定具と体の位置関係の再現性を確保するために体表面にマーキングを行う場合があります。
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CT撮影

病変や周囲正常組織の位置関係を三次元的に正確に同定し治療計画を行うために、病変部位を中心としたCT撮影を実際の治療体位(固定具装着の状態)で行います。

治療計画と線量検証

撮影したCT画像を用いて治療計画を実施いたします。強度変調放射線治療では、腫瘍に放射線を集中するための最適な変調ビームの組み合わせをコンピュータにより繰り返しシミュレーションいたします。さらに治療計画完了後は、計画通りに放射線量が照射されるかを実際の装置を使用して放射線測定器による線量測定を行い、精度と安全性を検証いたします。そのため、CT撮影から治療開始まで通常1-2週間の準備期間が必要となります。

 

治療の実際

体位再現性の検証と補正

計画通りの治療体位を再現するためにCT撮影時に作成した固定具を用いて寝台に寝ていただきます。照射直前にX線撮影をして体位再現性の確認・補正を行う場合があります。現在、京都大学の装置は画像誘導放射線治療(IGRT)機能を実装しており、高精度な治療を効率よく実施可能となっています。

放射線照射

照射回数は疾患によって異なり、前立腺がんの強度変調放射線治療では35~39回 、頭頸部がんでは35回前後の治療を土日祝日を除いて毎日実施 します。回数と合計線量は病態に合わせて個別に設定するために患者さん毎に異なります。1回あたりの治療時間は治療室への入退出、体位再現を含めて15~30分程度で、照射部位や範囲によって異なります。体外からの治療になるために、放射線照射中に痛みや苦痛を感じることはありません。