京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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画像誘導放射線治療(IGRT)

画像誘導放射線治療(Image-guided radiotherapy; IGRT)

放射線治療では、放射線を正確に腫瘍へ集中させ照射することが非常に重要です。しかし、放射線は目には見えないこと、腫瘍が体内にあるため外部から確認することができないことから従来はその確認が困難であり、治療計画時と実際の治療時との位置のずれを考慮してある程度の安全領域をつけて照射する必要がありました。 現在は、技術革新に伴い画像誘導放射線治療(IGRT)という技術が普及しています。IGRTは、照射の直前や照射中に得られる患者さんの画像情報(X線画像等)を基に日々の放射線治療時の位置誤差を補正しながら正確に治療する技術です。これにより、より腫瘍に集中した照射野(放射線を照射する範囲)で治療でき、副作用を抑えることが期待されます。 IGRTには様々な方法がありますが、当院では、放射線治療機や放射線治療室に搭載されたX線透視で骨や体内に留置した小さな金属マーカー等の位置を確認する方法、赤外線カメラで体表のマーカーの位置を確認する方法、放射線治療機にCTを併設し(コーンビームCT)、治療直前の腫瘍等の位置をCTによって確認する方法が採用しています。これらにより得られた画像情報から位置のずれ量を求めて位置を修正するので、高精度な治療が可能となります。

 

当院では、保有する全ての放射線治療機:OXRAYTrueBeam STxTrueBeam(2台)Ethos の5台がIGRT機能を有しております。

OXRAY(日立製作所)は、京都大学が開発に参加した最新鋭かつ国産の画像誘導放射線治療装置であるVero4DRT(三菱重工業、日立製作所)の後継機です。OXRAYの特徴は、赤外線カメラと2方向からのX線撮影の2つの位置決め機構による迅速な自動位置補正機能に加えて、CT撮影機能を有しており治療室内で撮影したコーンビームCT画像で腫瘍の位置を確認して正確な照射が可能です。また、その位置補正精度も多くのIGRT装置に比べ、1/10の単位での補正が可能です。

 

TrueBeam STx には、X線透視装置、コーンビームCTが装備されています。また、TrueBeam STx が設置されている放射線治療室にはExacTracという2方向からのX線撮影システムと赤外線カメラとが装備されています。ExacTracにより、短時間で画像情報を取得することが可能です。これらの機器により得られた画像情報をもとに位置ずれ量を正確に算出し、放射線治療用の寝台の位置ずれを修正します。

 

TrueBeamには、X線透視装置、コーンビームCT、ExacTrac、さらに当院では初となる体表面監視装置(AlignRT)が導入されました。AlignRTは体表面にランダムな斑模様の赤色光を三方向よりあて、高精度カメラでスキャンすることで高精度な三次元体表面を作成します。放射線を使わずに高精度なセットアップ、および照射中のモニタリングが行うことができ、イメージングに伴う被曝を低減することが可能です。AlignRTにて、体表面照合による放射線治療(Surface-Guided Radiation Therapy)が可能となるため、体表面に近い乳房照射などに精度の高い治療を提供することができます。特に左乳癌に対する深吸気息止め照射などには非常に有用なツールです

 

Ethosでは高速回転機構を活用し、約15秒でコーンビームCTを撮像することが可能です。イメージングにかかる時間短縮だけでなく、一度の息止めでコーンビームCT画像を得ることができます。さらにTrueBeamシリーズおよびEthosのCBCTでは、最新の逐次近似画像再構成法であるiCBCTを利用することができます。iCBCTは通常の逆投影法と比較して、高原子番号物質のストリーク状アーチファクトが軽減でき、画像ノイズを小さくすることができます。セットアップ用CBCT画像でiCBCTを利用しており、通常の逆投影法と比較して軟組織照合の精度が向上しております。現在は、頭頸部、肺などの強度変調放射線治療を中心に治療を行っています。