京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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Dynamic SwingArc (DSA)

Dynamic WaveArc (DWA)とは

放射線治療は非同一平面も含む多方向から照射(ノンコプラナ照射)することで,線量集中性を向上させ周囲の正常組織への線量を限りなく低減することが可能です.しかしながら,従来のノンコプラナ照射は患者寝台を照射門毎に移動させる必要があり,治療時間延長に直結していました.

Vero4DRT(三菱重工業/日立製作所)は,O-ring構造ガントリーを採用しており,患者寝台を移動させることなくノンコプラナ照射を容易に実施することが可能です.このO-ring構造を活かし波状軌跡でノンコプラナ照射を行う技術Dynamic WaveArc (DWA)を開発しました.

またDWAは強度変調回転照射(VMAT)機能も備えており,従来のノンコプラナ照射比べ周囲正常組織への影響を抑えつつ、治療時間の大幅な短縮を可能としました.

対象となる疾患

当院では,201610月より脳腫瘍,前立腺がんに対しDWA治療を開始しております.

 

脳腫瘍に対し放射線治療を実施した際,認知機能低下をきたすことが知られています.その原因の一つとして海馬への照射が問題視されております.特に,頭蓋底腫瘍である頭蓋咽頭腫や下垂体腺腫の疾患を治療する場合,治療対象部位に海馬が近接しており,単一軌道となるVMATでは近接する海馬線量を低減することは困難でした.そこで,ノンコプラナ方向から強度変調照射が可能なDWAを用いることで,従来の照射法と比較し大幅に海馬線量を低減することが可能であり,認知機能温存に貢献すると考えられます.

 

前立腺がんでは,前立腺周辺に膀胱,直腸,大腿骨頭の危険臓器が存在します.膀胱,直腸への線量に関しては,強度変調照射を実施することで大きく線量を低減することが可能となりました.一方,大腿骨頭は照射により骨折のリスクが増加すると考えられており、出来る限り照射しないよう配慮すべき臓器の一つですが,前立腺と同一平面上にありVMATを実施しても線量の軽減が困難でした.ノンコプラナ照射が可能なDWAを用いることで大腿骨頭への照射線量を低減し,骨折のリスクを低減できると期待されています.

上述した疾患以外も,危険臓器が隣接している疾患は多数あります.従来の照射法では危険臓器への線量低減が困難であった疾患においても,DWA照射を実施することで線量集中性を担保したまま,危険臓器への線量をさらに低減することが可能となります.現在当院では様々な疾患に対しDWAの有用性を明らかにし,適用拡大ができるよう検討しております.