京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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ラジオアイソトープ(radioisotope: RI)治療

放射性医薬品を用いて、甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症、甲状腺癌)、前立腺癌の骨転移の治療を行なっています。 放射性医薬品を用いるので、治療後しばらくは周りの方を被曝させないために患者さんに配慮をお願いしています。詳しくは治療の説明の時に説明いたしますが、この被曝により周りの方の健康を害することはありませんので、安心して治療を受けてください。
外照射(通常の放射線治療)と内照射(このページのRI治療)から患者さんに最適な治療法を提案するよう心がけております。外来は毎週火曜日、金曜日です。

また、放射性医薬品は時間がたつと薬の放射線量が減っていきますので、原則として投与日の変更はできません。外来でよく話し合って投与日を決めていきましょう。 

診療内容

RI薬剤を用いた核医学治療(内用療法、内照射療法、アイソトープ治療ともよばれます)

 1.甲状腺の放射性ヨード内用療法(甲状腺機能亢進症、甲状腺癌)

 2.転移性骨腫瘍の疼痛に対するストロンチウム(メタストロン)治療
 (2019年2月に廃止になりました)

 3.去勢抵抗性前立腺癌に対するラジウム(ゾーフィゴ)治療

 4.  各種RI治療についてのセカンドオピニオン外来

※ 悪性リンパ腫に対するイットリウム(ゼファリン)治療は当院では行なっておりません

甲状腺疾患に対する放射性ヨード内用療法

放射性ヨードのカプセルを飲む治療です。 内服した後、ヨードは全身を回りますが、甲状腺はヨードを取り込む性質がありますので、薬は自然に甲状腺やその性質を残した腫瘍(甲状腺癌)に取り込まれ、そこで放射線(β線)を照射して組織を破壊します。 ヨードからはγ線と呼ばれる放射線も出ますので、それを捉えて画像にすることができて、ヨードが目的の病気に集まっているかどうか確かめることもできます(ヨードシンチ)。

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カプセルに入った放射性ヨードを内服 甲状腺癌病巣にヨードが集まっているところ

治療の際にはヨード制限が必要になります(詳細は別のページをご覧ください)。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病、中毒性結節性甲状腺腫)

甲状腺が必要以上に甲状腺ホルモンを作ってしまう病気が甲状腺機能亢進症です。バセドウ病(グレーブス病)や甲状腺中毒症とよばれます。 次の3つの治療法があります。
 1. 抗甲状腺薬による治療:一般的に行われていますが、副作用など内服薬が適さない場合もあります。
 2. 手術:甲状腺の大部分を切り取ります。他の治療に比べて負担が大きく、傷が残ります。
 3. RI治療(このあと説明します)

  • 治療の効果

甲状腺機能亢進症を必ず治すことができます。 甲状腺の細胞を部分的に壊すことで、作り出す甲状腺ホルモンの量を減らします。結果として甲状腺機能亢進症は良くなって改善していきます。 放射線の効きやすさは個人によって異なるため、特に甲状腺が大きい場合などは、効きが悪いことがあります。この場合、再投与することにより治すことができます。 抗甲状腺薬治療と異なり、甲状腺の腫れを小さくすることができます。

  • 治療の副作用

治療の結果として甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが足りなくなる)になることがあります。その場合、甲状腺ホルモン剤を飲み続ける必要がありますが、ホルモン剤による副作用はありません。また、加齢によっても甲状腺機能は低下しますので、いったん甲状腺機能が安定しても将来的に甲状腺ホルモン剤が必要になることもあります。この治療により、不妊になったり、将来産まれる子孫に影響したりすることもありません。 ただし、放射性ヨード治療後甲状腺機能が正常化するまで(半年)は妊娠を避けてください。 小児にも安全であり、抗甲状腺薬を使えない時にはこの治療法を選ぶことがあります。
*妊娠中と授乳中にはこの治療を行うことができません。

  • 治療のながれ

治療は外来で行います。治療に必要な通院日は初診日、治療前々日・治療前日(甲状腺摂取率検査)、治療日の4日間です。治療後にも数回の経過観察があります。

治療1−2週間前から1週間後

ヨード制限(詳細は別のページをご覧ください)

治療1週間前程度

抗甲状腺薬の休止(内服している方のみ)

治療前々日

甲状腺摂取率検査(1回目)

治療前日

甲状腺摂取率検査(2回目)

治療当日

治療薬を内服

 *具体的な日程については外来で相談・説明いたします。

  • 治療前の検査

心電図:一時的に心臓に負担がかかることがあるため、心臓の状態を確認します。
血液検査
また、患者さんごとに最適の放射線量を計算するために以下の検査を行います。
甲状腺エコー:超音波で甲状腺の大きさをはかります。
甲状腺摂取率:別の放射性ヨード薬剤を用いて、甲状腺にどれくらいヨードが取り込まれるかをはかります。

甲状腺癌

RI治療の対象になる組織型は乳頭癌と濾胞癌です。RI治療の前に甲状腺が全摘出されている必要があります。

アブレーション治療、補助療法

手術で甲状腺を全摘しても目に見えない病変や甲状腺組織が残っていることがあります。それらを掃除して、再発を予防したり、経過をみやすくする目的で放射性ヨードを使用する治療です。 外来・入院どちらでも治療は可能ですので、手術の所見や術後の検査結果、家庭環境、患者さんの希望などにより最適な方法で治療を行います。

遠隔転移に対する治療

遠隔転移を有する分化型甲状腺癌の第一選択です。 肺・骨・肝臓などの離れた臓器にある病変にも放射性ヨードが集まり、治療することができます。治療には多量の放射性ヨードを用いるので放射線の管理のための入院治療が必要です。入院期間は1週間(月曜日に入院して金曜日に退院)です。 

 

  • 治療のながれ

入院、外来ともどちらもほぼ同じです。

治療23週間前

甲状腺薬(チラーヂン、チロナミンなど)の切替と休止

 *タイロゲン(甲状腺刺激ホルモン薬)を使う方は不要です

食事制限(ヨード制限)の開始

治療1, 2日前

タイロゲンを使う方は注射

治療当日

放射性ヨード内服

治療3日後

ヨードシンチ撮影

食事制限の終了、甲状腺薬の再開

*具体的な日程については外来で相談・説明いたします。

骨転移の痛みに対するストロンチウム(メタストロン)治療

2019年2月 にメタストロン治療は廃止になりました。

 

去勢抵抗性前立腺癌に対するラジウム(ゾーフィゴ)治療

遠隔転移のある前立腺癌の治療には一般的にホルモン剤が用いられていますが、ホルモン剤が効かなくなってきた患者さんに対する薬としてゾーフィゴが認可されました。 ゾーフィゴは日本で初めてのα線を出す放射線医薬品です。α線は他の放射線(X線、β線、γ線など)と比較して、届く範囲が短いですが効果の高い放射線です。骨転移に対して、抗腫瘍効果を発揮します。
治療の詳細につきましては当科RI外来へお問い合わせください。

  • 効果

抗腫瘍効果(癌細胞を破壊する効果)により生存率が改善することが臨床試験で示されています。

  • 副作用

骨髄抑制:血球数が低くなることがあります(貧血、白血球減少、血小板減少)。
ペインフレア:投与後1週間以内に痛みが強くなることがあります。しばらくしたら効果が出てきますので、鎮痛薬で対処します。
他に、嘔気嘔吐、下痢、食欲不振などの副作用が出ることがあります。

  • 治療の流れ

およそ4週ごとに1回、外来で注射を行います。 最大で6回の注射(半年間)で治療は終了です。 投与後しばらくの間は周りの方を被曝させないための注意はありますが、日常生活に特に制限はありません。
投与前のスケジュール調整が必要ですが、 詳しい投与日程やスケジュールは外来受診時に説明いたします。

 

診療実績

治療件数(年度ごとの集計)

年度 2014 2015 2016 2017 2018 2019
I-131 入院 遠隔転移治療 40 42 48 39 59 47
アブレーション 20 21 26 46 25 37
外来 アブレーション 19 28 17 12 14 14
甲状腺機能亢進症 12 17 18 19 11 17
ヨードシンチ(甲状腺癌) 11 9 12 20 10 5
Sr-89 メタストロン  2 2 2 0 2 廃止
Ra-223 ゾーフィゴ* 3 6 5 6

*ゾーフィゴは患者さんの数です。