京都大学医学部附属病院 放射線治療科

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婦人科がん

婦人科領域のがんには子宮がん(子宮頸癌・子宮体癌)・子宮付属器がん(卵巣癌など) ・膣癌・外陰部癌などがあります。子宮は膣の奥にある女性の骨盤部にある臓器で、赤ちゃんを宿す体部、膣につながる細長い頸部があります。婦人科領域のがんの治療には手術・化学療法・放射線治療が組み合わせて行われています。これらの癌のうち、放射線治療が行われることが多いのは子宮頸癌、続いて子宮体癌・膣癌・外陰部癌です。また、子宮頸癌や子宮体癌の術後の再発高リスクの場合や、術後の膣断端再発に対しても行われます。

子宮頸がん

子宮頸癌は最近、性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)がおもな原因と言われており、従来は罹患率が低下傾向でしたが、近年若年発症者の増加に伴いほぼ横ばいとなりつつあります。「子宮頸癌治療ガイドライン2011年版」で、放射線治療はⅠ-Ⅱ期(4cm未満)の扁平上皮癌において手術と並列した治療オプションとして表記され、Ⅰ-Ⅱ(4cmを超える)・Ⅲ-ⅣA期において放射線治療が推奨されており、臓器機能や全身状態に問題がなければ化学療法を同時に組み合わせて治療することが勧められています。

子宮頸癌に対する放射線治療は外部照射と腔内照射を組み合わせて行います。外部照射では、がんの原発巣のある子宮や、子宮傍組織(子宮と骨盤とつなぐ靭帯など)、骨盤内リンパ節を十分に含むように前後左右4方向から放射線を照射します。

また、腔内照射を組み合わせる場合は、直腸への副作用を減らすために、腔内照射を開始する頃から中央部分を遮蔽し前後2方向から放射線を照射します。

アプリケータ留置後の確認X線画像 高線量率密封小線源治療装置(マイクロセレクトロン)

子宮頸癌に対する腔内照射では、鎮痛剤や鎮静剤を十分に使用しながら、子宮と膣内にタンデムとオボイドという管状のアプリケータを挿入し、放射線を出す192Ir(イリジウム)を用いた小線源をその管の中に通して子宮の中から照射します。膣浸潤の著しい場合、シリンダーといわれるアプリケータを挿入し治療することもあります。病巣近くにたくさんの放射線を当てることができ、直腸や膀胱などへの影響を少なくすることができます。また体内に放射性物質が入るのは治療中だけなので、周囲の人への放射線の影響はありません。準備・治療にかかる時間は2時間前後ですが、実際に放射線が照射されているのは5-15分程度です。週に1回、病期や原発巣の大きさによって2回から5回に分けて行います。

子宮頸癌FIGO Ⅲb期の治療経過の一例

   初診時    化学放射線治療中   治療終了1ヶ月後    治療終了2年後

(赤線内が腫瘍)

放射線治療に伴う合併症

子宮頸癌の放射線影響に伴う副作用は時期により急性期(治療中から治療後数ヶ月以内に起こるもの)、晩期(治療後数ヶ月から起こるもの、頻度は5%以下)にわけられます。

急性期合併症

放射線宿酔(悪心・食欲低下・嘔吐など)・消化管症状(下痢・腹痛など)・膀胱症状(頻尿など)・放射線皮膚炎など

晩期合併症

放射線直腸炎・放射線膀胱炎・腸障害・リンパ浮腫・骨盤不全骨折など